「ごめんなさい」は言わないで?!ー子供がお友達を泣かせてしまった時ー


今の保育園で働き始めた頃、自分の育児に関する常識を覆す考え方に直面したことが多々ありました。最初は躊躇しましたが、幼児教育を学ぶにつれて、その考え方に共感できるようになり、自分の体に徐々に染み付いてきました。おそらく、共感できなければ、よその保育園を探していたと思います。でも今の園で働けて本当によかったと思っています。

 

今日は「ごめんなさい」のはなしをしようと思います。

 

私たちは故意であるかどうかにかかわらず、悪いことをしたらまず「ごめんなさい」と言うように教わって育ちました。きっと世界中でごく普遍的な習慣でしょう。アメリカでも2、3歳のときから、他の子をなんらかの理由で泣かせてしまったりすると”I’m sorry”と間髪入れず言う子がいます。よくしつけられているなぁと感心するのですが、わが園ではこの”I’m sorry”を子供に全く促さないのです。

 

例えば2歳の子が”I’m sorry”と言うとき、本当に相手に申し訳なく思って言っているかどうかというと、必ずしもそうではないと思います。罪の意識が芽生えるには、子供によって差はありますが、通常はもっと後になってからです。大人から「『ごめんなさい』は?」と促されたこれまでの経験から、反射的に言っているのだと思います。

3

一度、スタッフミーティングでこの「ごめんなさい」について話し合ったことがあります。子どもたちが誰かを傷つけてしまったとき(ぶつかったり叩いたりした時と、意地悪な言葉で傷ついた場合両方)、子供の意思と関係なく大人が「ごめんなさい」と言わせる慣習を変えようと、先生陣が案を出し合いました。誰かを泣かせてしまった子供に「『ごめんなさい』は?」と言う代わりに、”I noticed that the rock you threw hit __’s back.  You probably didn’t mean to but maybe you can check in with him?”と促します。日本語では、「あなたが投げた石が○○ちゃんの背中に当たってしまったね。当てるつもりはなかったのだろうけど、(泣いているお友達の)様子を見てきたらどうかな?」といった具合です。つまり、起こった出来事をそのまま描写して、相手が傷ついた事実を伝えてあげます。この時、自分の主観は入れないこと(例:「それは悪いことだよ」)。そしてまず先生から”Is there anything I can do for you?” “Do you want a hug or kiss or space?”とたずねます。「何か私に出来ることはある?ハグしようか?キス?それともスペースがほしい?」と続けます(日本語だとかなりクサいですね〜💦)。

 

これを実践し始めたときは先生だけがこう言っていましたが、子供たちはすぐにそのフレーズを覚えて自ら同じ事を聞くようになります。悲しんでいる側の子どもが「ハグが欲しい」と言うと、ハグをしてあげます。一番多い返答は圧倒的に「スペースです」。その子から離れたいという意味です。そのときはその子供同士が離れるようにしてあげます。中には、「あなたからハグはいらないけど⚪︎⚪︎先生からハグが欲しい」とか「特別注文」もする子もいて、それももちろんアリです😊これはおそらく1ヶ月くらいでだんだん浸透しきて、保護者の中には「うちでもやり始めた」という人もいました。

18

このアプローチには色々な意味があります。まず、意図してかどうかには関係なく、誰かを傷つけてしまった子供には、何が起こったかをわかるように説明してあげること。当人が状況を理解していないことはよくあります。理解していないのに、すぐに「ごめんなさい」と言わせるのは意味がありません。子供自身になぜそれが起こったかを考える機会を与えてあげれば、これからはそうならないように気をつけることも出来ます。

 

傷ついた側の子供にとっても、何が起こったかを説明してあげることは、気持ちが落ち着くのにとても役に立ちます。そして、「ハグ?キス?スペース?」と何かチョイスをあげること。特に、石が当たって、痛いのとびっくりしたのと怒っているのとで泣き叫んでいて、どうにも手につけようがなさそうな状態でも、何かしらのチョイスをあげることで脳と体がまたつながり、冷静になれます。この「選ぶ機会を与えてあげる」ことのパワーは偉大です。

 

このアプローチは園でいまだに健在ですが、時に新しいアイディアが必要な時もあります。というのは、子どもたちの中には、誰かを思わずぶってしまったときなどに、すぐに「Hug, or kiss, or space?!」と半ばやけくそで言う場面が見えるようになった時期がありました。これでは大人に言わされる「I’m sorry」と同じことです。

 

ということは、このアプローチも決して完璧ではないということです。でも、子供達の変化に応じて、周りの大人の変化すればいいのですから、またいろんなアイデアを出して実践していけばいいと思います。

12

では、自分の子がよその子を傷つけてしまった時、親としてどうすればいいのでしょう。

 

まず失敗例ですが、まだ小夜子が3歳のときのことです。まだ私は保育園での仕事を始めていない時です。ご近所の同年齢のお友達アナベルちゃんのお人形の脚を、小夜子が壊してしまったんです。小夜子はとてもバツの悪そうな顔をしています。悪いと思っているのはよくわかったのですが、「ごめんなさい」という言葉は出てきません。アナベルちゃんは泣き叫んでいます。私は小夜子に「ごめんなさい」は?と促して、やっと小夜子が消え入るような声で「ごめんなさい」と言いました。アナベルちゃんはまだ泣き叫んでいます。するとアナベルちゃんのお母さんが「泣くのはもうやめなさい。小夜ちゃんは謝ったんだから。」そして、グラス一杯のお水をアナベルちゃんに飲ませて、落ち着かせようとしています。

 

アナベルちゃんとしては踏んだり蹴ったりです。お気に入りのおもちゃは壊された上に、泣くことも許されない。これではアナベルちゃんの立場を尊重しているとは言えません。その時は、それが普通の親の対応と私も思ったのですが、今だったら全く違った対応をしたと思います。

 

まず、小夜子に「『ごめんなさい』は?」とは言いません。代わりにアナベルちゃんに語りかけます。「小夜ちゃんが脚を引っ張ったから壊れてしまったね。このおもちゃはアナベルちゃんのお気に入りだよね。ごめんね。脚が直せるかどうか見せてくれるかな。あなたの気持ちがちょっとでもハッピーになれるように小夜ちゃんに何かできることはある?」と、こんな具合です。(やはりこの日本語は極クサですな😅・・・クサくない日本語訳が得意な方は教えて下さい😔)

 

そうすれば、アナベルちゃんは「小夜ちゃんにもっと私のおもちゃを大切にするように約束してほしい」とか「小夜ちゃんに私のおもちゃに『ごめんね』と言ってハグしてほしい」とか、3歳ならではのリクエストをしてくれるかもしれません。そしてこのプロセス自体を、おもちゃを壊してしまった小夜子の目の前ですること。これだけで3歳の小夜子にとっては学ぶ機会として十分だったはずです。

20

もちろん、「ごめんなさい」という言葉が持つパワー自体を否定するわけではありません。相手が本当に悪いと思っているかは別として、ただ「ごめんなさい」の言葉が聞けただけで、それを忘れて前に進めることは、大人にだって(いや、大人の方が)あります。そして大人にとっても「ごめんなさい」を言うのは時としてすごく難しい😖夫婦間でも、しょーもないことは「ごめんなさい」とすぐに言えるのに、本当に悪いと思っていることに限って素直に謝れないものです。それがわかっておきながら子供に強制するのは、フェアじゃない気がします。

 

親や教師としては、子供たちに思いやりを持ってほしい。でも、「思いやり=ごめんなさいと言うこと」だとは思わないし、そのメッセージを子供に与えたくはない。もしそんな考えの方がいらっしゃたら、ぜひ「『ごめんなさい』は?」と言うのを一度ぐっとこらえてみてください。そしてお子さんにどんな変化があるか、見つけてみてくださいね!

コメントを残す