スパイニー初めてのバスの旅ーポートランドの光と影ー


今日はダウンタウンにある日本領事館に用事があった。11月にスパイニーと二人で帰省するので、スパイニー用のパスポートを申請する必要があるからだ。

スパイニーが生まれてからバスに一度も乗ったことがない。やはり車の方が便利だし、駐車場代もバス代と同じくらいなので、ついつい車での移動をしてしまう。

でも今日はなんだか急にバスに乗りたくなった。うん、バスで行こう!

いつもは次のバスがいつ来るかをスマホで調べてからうちを出るが、今日はそれもなし。だいたい15分おきくらいに来るので、待っても大したことはない。スパイニーが生まれてから、必要がない時以外はなるべく時間に制約されないようにしている。なんと恵まれた話だけど、仕事を休んでいる今だけの特権と思って、そのことに罪の意識を感じないようにしている。

img_7299バス賃は2ドル50セント。7年前にポートランドに越してきた時は1ドル25セントだった。倍にはなったけど、それでもまだ安いと思う。これでポートランド中のどこでも行けるのだから。最初に乗って2時間半以内なら同じチケットでどこでも行ける。今日のように、滞在先で長居しない場合は往復で2ドル50セントということになる。

バス停に着いて、バス停に書いてあるバス停IDをTrimet(ポートランドのバス会社)の番号にテキストメッセージする。するとすぐに返信があって、あと何分でバスがやってくるか教えてくれる。とても便利なシステムだ。「3分」と返信があった。思った以上に待ち時間が少なかった。ポケットにちょうど2ドル50セント用意する。子供の時から、バスに乗る時は若干緊張する。今はスマホにTrimetのアプリをダウンロードしてあらかじめお金を課金しておけば、それを乗る時にセンサーにかざせばいいだけなので、次回からそれにすれば小銭を用意する必要もない。

ストローラーでバスに乗るのは初めてなので、さらに緊張する。バスが見えた。自分たちが木の陰にならないように、ちょっとアピール😁。ボストンに住んでいた時に、このアピールが足らず、運転手に気づかれなかった苦い思い出がある。

バスが着くと、車体を歩道の高さくらいに下げてくれた。ドキドキだったストローラーでの乗車はとってもスムーズに行った。

img_7304ストローラーを運転席と優先席の間の広いスペースに停めて、自分はしばらく立っていたが、8席ある優先席に、女性が一人しか座っていなかったので、自分も甘えさせてもらうことに。スパイニーは大型スクリーンのようなフロントガラスから見える景色を存分に楽しんでいる。

私たちが住んでいるポートランドのサウスイースト地区は、私が引っ越してきて以来急速に発達した。お店が急激に増えて、家賃は高騰。今住んでいるアパートの家賃は 7年間で600ドルからおよそ1,000ドルまで上がった。今のアパートを出でしまえば、おそらくポートランドのどこに行っても1,000ドルで住める同じような広さのアパートは存在しないだろう。

うちからダウンタウンに向かうバスのルートは去年変更になった。以前はRoss Island BridgeでWillamette川を挟んで街の反対側に行っていたが、去年からTilikum Crossingという名の新しい橋を渡るようになった。その橋は歩行者、自転車、バス、MAXという路面電車、緊急用車両のみが通行できる特別な橋だ。一般車やトラックは一切通れないことになっている。

その橋に向かう途中、ホームレスの人たちがキャンプを張るエリアがバスからいくつか見えた。そのような場所は以前はダウンタウンかそれに近いところに多く見えたが、今はサウスイーストにもたくさんある。

img_7305バスが橋を渡り終える頃、ウォーターフロントと呼ばれる水辺のエリアが見えてきた。すでに新しい高層ビルがたくさん建っているが、更に開発を進めているのがわかる。

バスに乗ると、ポートランドのジェントリフィケーションの現実がより顕著にわかる。目まぐるしいスピードで進む都市開発と、増えるホームレスキャンプ。この二つが連鎖しているのは明らかだ。

img_7312領事館近くのバス停でバスを降りると、すぐにスパイニーは寝てしまった。バスからの眺めを満喫して疲れたのだろう。パスポート申請用紙を領事館でもらい、その後はダウンタウンを少し散策。市役所前には、ホームレスの二人組がテントを張っていた。ジェントリフィケーションに抗議するサインもある。写真を撮っていいかたずねて、少しだけどドネーションもした。私たち家族も、このままジェントリフィケーションに歯止めがかかなければ、ポートランドに長くは住めないかもしれない。他人事では全くない。

スパイニーが起きたので、ショッピングモール内のトイレでおむつを替え、授乳も済ませた。さて、帰る時間だ。

近くのバス停では結構多くの人がバスを待っていた。バスは混雑しているのだろうか。ちょっとだけ不安になる。ちょっとのんびりし過ぎて、ラッシュアワーが始まる時間が来てしまったのだ。

予想通り、やってきたバスはすでに混み気味だった。なるべく迷惑がかからないよう、立ったままドア付近にいようと思った瞬間、運転手が言った。

「赤ちゃんはストローラーから出してね。」

これは予想外。運転手は私がスパイニーを出すのをバスを出発させずに待ってくれている。急いでストラップを外して、膝に抱っこしたまま優先席に腰掛けた。

行きは写真を撮る余裕もあったのに、帰りは全く違う状況だ。しかもバスが止まるたびにどんどん人が乗ってくる。いつもは「小回り利いて最高!」と思うこのストローラーも、その状況ではデカすぎて迷惑極まりない存在にしか見えない。優先席もいっぱいになってきてしまった。

早く着かないかなぁ。

私の心配をよそに、スパイニーはきゃっきゃ喜んでいる。顔を上げると、周りの乗客の人達がスパイニーに話しかけたり笑ったりして「遊んで」くれているのに気づいた。

なんだ、みんな私のことを「迷惑な人」とは思っていないみたい。私にも「ハッピーベイビーだね」「何ヶ月?」と色々話しかけてくれる。私も少しずつ肩の力が抜けてきた。

もう途中で降りて歩いて帰ろうかな、とも思っていたけど、みんな親切にしてくれているし、雨も降っているし、やっぱりちゃんと自分のバス停まで乗っていることにした。

その時、ある男性がバスに乗ろうとした。大きな透明のゴミ袋を抱えている。中には空のベットボトルがたくさん入っている。空き瓶やペットボトルを集めて、大型スーパーなどに設置された専用の機械に持っていくと、リサイクル代としてボトル一つ当たり5セントもらえる。ホームレスや収入のない達が、ペットボトルなどを集めているのはポートランドでは日常の光景だ。この男性もおそらくそうだろう。

運転手が言った。

「袋から雫が垂れている。よく振ってから乗ってね。」

雨が降っているせいで、確かに袋は濡れている。男性は袋を何シャカシャカと振ってから乗車した。

次の公園前のバス停にも待っている人が数人いて、バスはいよいよ混雑してきた。すると運転手がその男性にこう言った。

「バスがいっぱいになってきた。その袋を持っているんなら降りてもらうよ」

男性はとっさにその袋を開いたドアから公園に向かって投げ捨てた。雨の中集めたペットボトル。彼にとっては貴重な数ドルになる予定だったはずだ。でもバスで目的地に向かう方がその男性にとっては重要だったのだろう。運転手さんちょっと厳しいんじゃ、とも思ったが、ルールなら仕方がない。

私の降りるバス停の一個前のバス停を過ぎた。スパイニーをストローラーへ戻して、ストラップをする。運転手がすぐに気づいて「次で降りるの?」と聞いてきた。程なくバス停に着くと、「この女性と赤ちゃんが降りるから、前側の人みんな降りて!」と運転席周辺に陣取っていた乗客に指示を出した。

皆の衆、頭が高いぞ〜!若殿のお出ましじゃ〜!

はは〜!

大げさに言うとまるでそんな雰囲気だ。当の私は恐縮しまくりだ。でも、降ろされた人たちはみんなニコニコして私たちを見守ってくれている。

お礼を言いながら降りて、バスが出て行った。ふーっ。やっと息ができる。

帰ってからTrimetのウェブサイトでストローラーポリシーをチェックした。

「子供を乗せたまま乗車してもよいが、バスが動き出す前に子供をストローラーから出さなくてはならない」

えー?!あの運転手さんが正しかったのかぁ。今までバスでストローラーに子供を乗せたままの人をたくさん見てきたから、てっきりそれが正しいやり方なのかと思っていた。しかも、

「安全のため、ストローラーは折りたたむこと」

とも書いてある。えー?!アメリカでも折りたたむ?!(失礼😅)。ということは、行きのバスで私は二重にルール違反をしていたことになる。がーん😱。。。やっぱりスペースも取らずすぐに折りたためる、コンパクトストローラーで乗るのが筋だよな。いくらアメリカが広大な大地の国とはいえ、バスはバスだから。小夜子に使っていたコンパクトストローラーが倉庫にあるので、それを出すとしよう。

************

いや〜今日は大失敗して、気疲れもしたけど、いい勉強になった。これに懲りず、これからもバスをどんどん利用しよう。環境にもいいし、毎年悪化するポートランドの交通渋滞の緩和にちょっとでも貢献できる。

今日、車で出かけていたら遭遇していなかった親切な人たち。車からは見えなかったかもしれないポートランドの厳しい現実。これからもっともっと発掘したい。

コメントを残す