英訳された日本の絵本たち


アメリカに住みながら、本屋さんや図書館で、英訳された日本の絵本に出会うととても嬉しくなる。

例えば五味太郎の本は、職場の保育園にもいくつかあるし、スパイニーにもお祝いで何冊かもらった。

中でも『みんなうんち』の英訳本Everyone Poopsはプリスクールの子ども達に大人気だった。うんちに関する本は英語では他に見たことがない。人気があって当然だ。

その他には、

Bus Stops(『バスがきた』)

Spring is Here(『仔牛の春』)

Mommy Mommy(『どこどこここ・ここ…』)

これらの3冊はスパイニーにほぼ毎日読んでいて、まだあまり反応はなくじーっと見ているだけだけど、好きなのだろうなというのは伝わってくる。私も大好き。日本に帰省したら是非オリジナル日本語版を入手したい。

そして、自分自身が小学生の時、国語の教科書に載っていてずっと忘れられない『スーホの白い馬』の英訳版Suho’s White Horse。これは小夜子に読みたくて、自分で英語版を探して購入した。当時小夜子は3歳。本当に悲しいお話だけど、何度も読んでとねだってきた。職場のプリスクールでもみんなが大好きな本の一冊だった。中には、白い馬に矢が刺さるシーンが怖くて読みたくないと言う子もいたが、ほとんどの子はそのストーリーと絵に心を奪われて、一時期毎日のように読まされた。

img_7439そして、これは私が保育園時だった頃に大好きだった本、『はじめてのおつかい』。みいちゃんに思い切り感情移入して、あれは自分のお話なのだとさえ思っていた。おつかいに一人で行く時のドキドキ、自分の存在になかなか気づかないおしゃべりな大人たち、おつりをちゃんと持って帰れるかの不安、コンクリートで転んだ時の膝のジンジンする痛み。共感できる気持ちばかりが描かれていた。

こちらも英語版Miki’s First Errandを小夜子用に購入したのだが、残念に思う箇所がいくつかあった。

まず、みいちゃんがお友達のともちゃんに出くわすシーン。英語版ではともちゃんは”Tom”になっている。みいちゃんはMikiとなっていて日本名だから違和感がないが、なぜTom???そのままTomoでいいのでは、と思う。

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そして物語を読み進めると、商店が出てくるが、日本語で書かれた看板がすべてまっさらに上塗りされている。さりげなくではあるが、文字が何もなくなっている。他のページを見ても、すべてのひらがな漢字の看板、お店の張り紙、通りの掲示板などの文字が消されてしまっている。

挿絵に描かれたひらがな漢字も、絵本としての作品の一部のはずだ。それにこの本を子どもに読んであげる英語圏の人も、きっと子どもたちにひらがなや漢字をそのまま見せてあげたいのではないだろうか。異文化に触れ合う機会を、わざわざ奪ってしまうのは疑問だ。

そして、一番がっかりしたのがここ。

img_7443サングラスをした怖そうなおじさんがお店にやってくる重要な場面。私も小さい頃サングラスをした人が怖かった。というかサングラスをかけた人はみなヤクザなのだと真剣に思っていた😅

英語版にもこのおじさんは登場する。

オレンジジュース!

オ、オ、オ、オレンジジュース?!

これではみいちゃんが、「なんや見かけによらんとかわいらしいやん、このおっちゃん」となってしまうではないか!!!

この強面のおじさんはやっぱりタバコを買わなきゃダメでしょ。オレンジジュースなんてハイカラなものを買ってはダメなんです、このシーンでは。

タバコを買うシーンを絵本に入れるべきではない、とかいう人もいるのはわかる。英語版の出版社はきっとそれを恐れてここを変えたのだろう。出版上の規制もあったかもしれない。でも、この本は元々日本で出版されたもの。しかも、初めて出版されたのは1977年なので、タバコを表立って宣伝できなくなった現在とは時代背景も異なる。

アメリカなら、おそらくこの本を読んだ多くの人は、5歳の女の子を一人でおつかいに行かせるなんて!!!とまずそこにびっくりするだろう。この本の核となるテーマがすでに大きなカルチャーショックなのだから、ともちゃんをトムにしたり、挿絵の日本語を消したり、タバコをオレンジジュースにしたりするのが、益々無意味に思えて仕方がない。

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