SIDSのリスクを減らすためにできることー改定版アメリカ小児科学会ガイドラインをヒントにー


ベビーベッドがない我が家では添い寝をしている。
ベビーベッドがない我が家では添い寝をしている。

アメリカ小児科学会がSIDS防止ガイドラインを改定

SIDS(乳幼児突然死症候群)に関する記事を新聞などでよく目にするようになった。SIDSはそれまで元気だった赤ちゃんが、睡眠中に突然なくなることで、解剖でも原因がわからないことが特長だ。厚生省のウェブサイトによると、平成27年では日本で96人の赤ちゃんがSIDSで亡くなったという。ホームページには次の3つをすることでSIDSのリスクは減らすことができると書いてある。

1)一歳になるまでは仰向けで寝かせる。

2)なるべく母乳で育てる。

3)タバコをやめる。

厚生省のホームページ以外にも、SIDSを予防するためのより具体的な情報が載ったウェブサイトは多くあり、参考にしたい。

ここアメリカでは先日、アメリカ小児科学会(American Academy of Pediatrics=以下AAP)がSIDSに関する新しいガイドラインを発表した。日本とアメリカでは赤ちゃんの睡眠をめぐる考え方や習慣は異なるが、それでもかなり参考になる。

この記事では、AAPの最新版ガイドラインのポイントをわかりやすくまとめる。

アメリカの赤ちゃんは一人で寝るの?

アメリカの家庭で、赤ちゃんの睡眠を巡る環境といえばどんなものを想像するだろうか。映画やテレビドラマから見て取れるのは、赤ちゃんは自分の部屋が与えられ、クリブと呼ばれるベビーベッドで一人で就寝。お昼寝中でも夜でも、赤ちゃんが目覚めた時はベイビーモニターで大人に知らせられる。そんなイメージを持っている人は多いのではないだろうか。

私はこれまで数多く単発ベビーシッターを引き受けたことがあるが、そのイメージ通りの家庭はたくさんあった。ただ、これらの多くが白人、中産階級で、郊外にうちを所有する家庭。人種や階級が異なれば、この環境は変わってくると予想できる。

私の職場の保育園では、ほぼ全員の子供がこうした白人、中産階級、持ち家がある家庭から通っている。ただ実際に子供たちや保護者に話を聞いて、意外なことに気付いた。「赤ちゃん部屋またはベビーベッドがある=赤ちゃんが一人で寝る」とは限らないということ。赤ちゃんから幼児期にかけて、親と一緒の部屋で寝ている子供は予想以上に多い。それぞれの家庭でそれぞれの事情があり、映画やテレビドラマで見る光景が、必ずしも実際の家庭の現実ではないことがわかった。

それに加え、アメリカでは近年、『親子が一緒に寝ること』の利点を見直す動きが高まった。ポートランドのように「子育てに理想的な街」と呼ばれるようなリベラルな都市には、アメリカの伝統的なやり方に追随せず、多くの国で普通の光景である「添い寝」を選択する家庭は、平均より多いだろう。

改訂版ガイドラインで認められた現実とは

「子供と一緒に寝ること」は英語でco-sleepingと呼ばれ、その中でも同じベッドで寝る「添い寝」はbed-sharing、ベッドは共有しないが同部屋で寝るのがroom-sharing。これらがアメリカの家庭で今まで以上に一般的なってきたとは言え、AAPはこの習慣を推奨しない立場はこれまで一貫している。SIDSが起こる確率が上がるというデータがあるためだ。

ただ、この度改定されたAAPのSIDSに関するガイドラインには、この「添い寝」について、一定の理解が示されているという。

新生児の頃はよくソファで親子ともに寝落ちしていた。
新生児の頃はよくソファで親子ともに寝落ちしていた。

10月25日のNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)ニュースによると、これまでのガイドラインとの違いは、多くの母親が赤ちゃんと一緒のベッドで意図せず眠りに落ちてしまう事実、そして多くの母親が添い寝を選択しているという事実を認識した上で、添い寝をするときのSIDSのリスクを出来るだけ減らすために何ができるかに焦点を当てた点だそうだ。

オリジナルの記事はこちら

上にも述べたように、それぞれの家庭にそれぞれの事情があり、添い寝がSIDSのリスクを高めることをわかっていながら、現実にはそれをせざるをえないこともある。例えば、

− 添い寝をしないと赤ちゃんが寝てくれない
− 赤ちゃん部屋もなく、親の寝室にベビーベッドを置くスペースもない
− 授乳期間が頻繁で、同じベッドで寝ることで授乳をより簡単にしたい

今回のガイドラインが、赤ちゃんの睡眠の理想と現実の『現実』に目を向けてくれたことで、様々な事情で添い寝を選択せざるを得ない状況の家庭にも、SIDSのリスクを減らすため何ができるかの選択肢が与えられたというわけだ。

ガイドラインの重要ポイントは?

それでは、具体的にどのようなことが提案されているのだろう。ガイドラインに言及してある重要なポイントを「リスク増」「リスク減」に分類し、その下に各項目の解説をつけたので是非参考にしてほしい。

リスク増😣 リスク減😊
A 添い寝        ✔️
B うつ伏せ寝        ✔️
C 柔らかいマットレス        ✔️
D ブランケット        ✔️
E 羽毛ぶとん        ✔️
F ピタッとしていないシーツ        ✔️
G        ✔️
H ぬいぐるみ        ✔️
I ベビーベッド・クリブの使用        ✔️
J ベビーベッド柵用クッション        ✔️
K 赤ちゃんの就寝児の厚着        ✔️
L 4ヶ月以下の赤ちゃん        ✔️
M 早産・低体重の赤ちゃん        ✔️
N 母乳での育児        ✔️
O 赤ちゃんとのスキンシップ        ✔️
P おしゃぶりの使用        ✔️
Q ソファでの就寝        ✔️
R 母親の産前産後に渡る喫煙        ✔️
S 赤ちゃんの周辺での喫煙        ✔️
T 母親による飲酒・薬物摂取        ✔️
U 親による眠気を伴う薬の摂取        ✔️
V 予防接種を定期的に受ける        ✔️
W ベビーベッドが壁のすぐ横にある        ✔️
X 兄弟と並べて寝かせる        ✔️
リスク増😣 リスク減😊

以下は項目ごとの具体的な解説で、特に明記がない場合はAAPのガイドラインを参照している。

A: 添い寝をする家庭に一定の理解が示されたとはいえ、AAPは一貫して添い寝は推奨しない立場だ。

B: 赤ちゃんを寝かせる時は必ず仰向けにする。

C: 添い寝の場合もベビーベッドの場合も柔らかい敷布団やマットレスを使用しないこと。

D&E: 就寝中に、ブランケットや羽毛ぶとんで顔を覆われて窒息するケースが最多というデータがある。

F: シーツは布団やマットレスにぴったりフィットした状態であることを確認する。

G: 枕を使用しない。これは寝返り防止用の枕も含む。

H: ぬいぐるみなどやわらかいおもちゃは窒息の原因となる。

I: 親と同じ寝室で、ベビーベッドを使用することが最も理想とされる。親のベッドで授乳したとしても、授乳後に赤ちゃんをベビーベッドに戻す。

J: ベビーベッドの柵に付けるカバーによる窒息事故が報告されている。

K: 厚着をさせず、赤ちゃんが汗をかいていないかチェックする。

L: SIDSのほとんどが月齢6ヶ月以下で起きている。添い寝の場合は4ヶ月以下が最もリスクが高い。

M: SIDSはなんらかの状況で窒息した時に赤ちゃんが目が覚めるができない時に起こり、これは低体重児や、未熟児で生まれた赤ちゃんにより起こりやすいことがわかっている。添い寝の場合はさらにそのリスクが上がる。

N&O: 母乳での育児、赤ちゃんとの肌の触れ合いが、赤ちゃんの神経系の発達に役立ち、結果SIDSのリスクを減らすことがわかっている。(上のNPR同記事より)

P: おしゃぶりとSIDSの関係性は明らかにはなっていないが、次の可能性が指摘されている。1)おしゃぶりをしていると寝返りをする確率が下がる。2)おしゃぶりをしている赤ちゃんの方が目が覚めやすい。3)おしゃぶりをしていることで気道が確保出来る。(http://www.firstcandle.org)

Q: ソファでSIDSが起こる確率はベッドよりも高い。例えば母親が夜、泣きやまない赤ちゃんを落ち着かせるためにリビングにやってきてソファで授乳し、そのまま寝入ってしまった時にクッションなどの隙間に挟まれたりして起こる。(上のNPR同記事より)

R & S: 妊娠中の母親の喫煙による胎児への影響、赤ちゃんが周辺の喫煙者から受ける影響がSIDSのリスクを上げることがわかっている。また喫煙者との添い寝もリスクをあげる(ベッドで吸っていなくても)。

T & U: アルコールや薬を飲んだ後での添い寝は避ける。

V: 予防接種でSIDSを防げるわけではないが、赤ちゃんの発達、健康を維持する意味でリスクを減らす。

W: 窓のブラインドのコードなどがベッドにかかっていないかなどもチェックする。

X: 赤ちゃんが双子などの場合も同様に避ける。

スリープサックと呼ばれる着るタイプのブランケット
スリープサックと呼ばれる着るタイプのブランケット
ウェッジと呼ばれるクッションでより安全に添い寝できるためのアイテムだが、AAPは勧めていない。
ウェッジと呼ばれるクッションでより安全に添い寝できるためのアイテムだが、AAPは勧めていない。

ガイドラインにはこれ以外にも、SIDSを防ぐ目的でベイビーモニターを使うことを避けるように書いている。また、おくるみ(スワドリング)でSIDSを避けることはできないともある。これは、万が一おくるみをしている時に寝返りをしてしまった場合に、窒息する危険があるからだ。ただ、スリープサックと呼ばれる、着るタイプのブランケットは手足の自由が利く分、より安全なようだ。

ウェッジなどの添い寝グッズも安全性が確認できないとしてAAPは推奨していない。添い寝をしている我が家にも日本の添い寝グッズがあり、5ヶ月くらいまで使っていた。間に少しでも壁があるお陰で安心感があったが、あくまで自己判断で使うしかないということだろう。

リスクファクターで溢れている。。。当時はSIDSについて無知だった。
リスクファクターで溢れている。。。当時はSIDSについて無知だった。

終わりに

ガイドラインを読んでいると、あれもダメ、これもダメ、とダメダメだらけで、特に添い寝をしている身にとっては神経がすり減らされる気持ちになる。ただ、リスク増の項目が自分に多く当てはまるからといってSIDSが必ず起こるわけではないし、一つも当てはまらいからといってSIDSが起こらないと言い切れるわけではない。出来るだけSIDSの可能性を小さくするためにガイドライン通りできればよいが、そうはいかないが現実だろう。また、最初にも触れたが、このアメリカのガイドラインが日本人の感覚や文化にそぐわない点もあるだろう。

自分の赤ちゃんをめぐる環境、パートナーとの協力、経済的事情など、条件が許される範囲でベストを尽くしていけたらと思う。そして有益な情報が見つかるごとに発信していき、SIDSが少しでも減らせるよう役に立ちたい

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